東京観光財団とJARTAが旅行における「脱炭素」をテーマに共同研究を実施

公益財団法人東京観光財団のプレスリリース

公益財団法人東京観光財団(東京都新宿区、理事長:金子眞吾、以下TCVB)と一般社団法人JARTA(京都府京都市、代表理事:高山 傑、以下JARTA)は、共同研究「東京都内と東京を起点とした脱炭素旅の検証」を実施しました。

国内外で高まる「持続可能な観光」への関心。国や都がCO2の削減目標を掲げている中、環境に配慮した観光の在り方がこれまで以上に求められています。そこで、観光が「脱炭素」に向かうにあたって、そもそも旅行をするとどの程度CO2が排出されるのかを知る必要があると思い、本研究の実施に至りました。本研究では、既存のCO2排出量算定ツールを利用し、東京3泊4日及び東京発京都1泊2日旅行の移動にかかるCO2排出量の可視化を通じて、以下のことを検証しました。

  1. そもそも、旅行におけるCO2排出量は算定出来るのか
  2. 国内で算定できるツールはあるのか、算定は簡単か
  3. 算定をより容易にするためにはどうしたら良いか
  4. 移動手段を変えると、 CO2排出量にどれほど差が出るのか
  5. 日常生活より旅行の方がCO2排出量は多いのか
  6. 東京における「環境に優しい旅」は何をプロモーションすれば良いのか

【結果】

  • 旅行におけるCO2排出量の算定は出来るが、複数のツールを使う必要があり、簡単ではない。また、公開データも十分とは言えない。
  • 旅行における脱炭素促進には、算定ツールの統合化の必要がある。
  • 移動手段を環境配慮すると、CO2排出量は東京3泊4日の旅で最大26Kg減る。
  • 1日当たり、旅行は日常生活の約7倍のCO2を排出する。
  • 東京における「環境に優しい旅」=「公共交通機関を活用しよう」そして「歩いて街を楽しもう」

ということが、分かりました。
国内旅行が活性化し、訪日旅行者が戻り始めた今、環境分野における「持続可能な観光」を今後一層推進するためにも、本研究の成果が、観光業界の皆さまがこれから脱炭素に取り組むにあたっての一助になれば幸いです。
<報告書本編PDF>
https://www.tcvb.or.jp/jp/project/4d3238935cb72955534f63e6f35c01bd_2.pdf

【CO2排出量の算定手法】

本研究では、インバウンド旅行客を想定した東京3泊4日、京都1泊2日をそれぞれスタンダードと、環境に配慮したサステナブルの2パターンに分け(計4旅程)、移動にかかるCO2排出量を算定・可視化を試みました。
スタンダードは観光スポット間の移動にすべて専用車を使い、また、京都1泊2日の東京から京都の移動は国内線飛行機を利用しました。サステナブルは、観光スポット間の移動に可能な限り徒歩と公共交通機関を利用、サイクリングツアーも組み込み、京都への移動には新幹線を利用しました。なお、海外からの渡航にかかるCO2排出量は算定対象外とし、東京・京都のホテルは、スタンダード・サステナブルで差をつけず、同じ宿泊施設を利用しました。
CO2排出量の算定・比較には以下のツールを利用しました。
・CARMACAL(カルマカル)
・交通・観光カーボンオフセット支援システム
・CO2排出量の計算シート
・Yahoo MAPアプリ
・Google Flight

CO2排出量の算定から分かったこと】
・観光スポット間の移動は、地下鉄やバス等の公共交通機関、サイクリングツアーを取り入れことで、CO2排出量が大幅に減少。
・新幹線は、飛行機と比べてCO2排出量が5分の1
・各ツールには、算定できる項目とそうでない項目があり、旅行トータルのCO2排出量算定は簡単ではない。
・CARMACALを利用するとホテル1客室当たりのCO2排出量が算定できるが、あくまで建物面積等の条件から推定されているため、実際の数値との差が見えにくい。

【旅行は1日当たり、日常生活の約7倍のCO2を排出する】

東京3泊4日で、1日当たり約34KgのCO2が排出されることから、それが日常生活における排出量とどの程度差があるのかを検証しました。国立研究開発法人国立環境研究所「日本の温室効果ガス排出データ」及び地球環境戦略研究機関(IGES)が推計し、公表した報告書『1.5℃ライフスタイル』を参照すると、1日当たりの排出量はおおよそ5kgと推定され、旅行は日常生活の約7倍ものCO2を排出することが分かりました。旅行はそもそも多くのCO2を排出するため、せめて現地での移動には、環境に優しい移動手段をオプションとして提案することが重要です。

【見えてきた課題と今後の取組方向性】
今回、複数のツールを利用して旅行の移動に係るCO2排出量を算定しましたが、今後は、移動だけではなく、旅行の各項目を一貫して算定できるツールやポータルサイトがあると、より取組が進むと考えられます。アプリ等を通じて、個人が移動に関するCO2排出量を手軽に確認できる環境が整いつつありますが、今後はインバウンド客の利用も見込み、より使い易くグローバルユーザーにも対応したサービス展開も望まれます。そして、業界全体で脱炭素を促進するには、ホテルや観光施設等のCO2排出量の算定・公表や、各種国際基準の取得に向けた自治体や観光推進団体による一層の支援も必要であると認識する結果となりました。グローバルOTAの調査によれば、世界の旅行者の71%が、今後1年間、より持続可能な旅行に向けた努力をしたいと回答しており、その割合は増加していると言います。そうした旅行者のニーズに答えるためには、観光地や観光事業者が、地域の状況に合わせながら、旅行者に徒歩・自転車・公共交通機関等の「環境に負荷の少ない交通手段」のオプションをきちんと提示し、アピールしていくことが重要です。また、徒歩や公共交通機関で移動しやすい都心部は、そのメリットを「環境に優しい旅」のプロモーションにも存分に活かせることを再認識できる結果となりました。

<TCVB共同研究>
https://www.tcvb.or.jp/jp/project/research/theme/
<報告書本編PDF>
https://www.tcvb.or.jp/jp/project/4d3238935cb72955534f63e6f35c01bd_2.pdf

【本件に関する問合せ先】
■公益財団法人東京観光財団 総務部総務課(企画調査)
電話:03-5579-2680 メールアドレス:sanjyokaiin@tcvb.or.jp
■一般社団法人JARTA 事務局
電話:075-406-7700 メールアドレス:secretariat@jarta.org

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