滋賀県のプレスリリース
~1100年前から受け継がれる中国へのパスポート~ 大津市の三井寺(園城寺)が所有する国宝が 「ユネスコ・世界の記憶」に登録決定! 登録名称:「智証大師円珍関係文書典籍―日本と中国の文化交流の歴史―」 ―特別展も開催予定― 園城寺文化財収蔵庫(5/25~7/2)、大津市歴史博物館(7/4~30)
滋賀県大津市にある天台寺門宗の総本山・三井寺(園城寺)が所有する国宝「智証大師関係文書典籍」と国宝「五部心観」の2件が、5月25日のユネスコ執行委員会を経て、「ユネスコ・世界の記憶」に『智証大師円珍関係文書典籍-日本と中国の文化交流の歴史-』の一部として登録が決定しました。
今回登録された世界の記憶は、9世紀における日本と中国の文化交流の歴史を物語る史料群です。当時の中国・唐は東アジア世界に影響を及ぼす大帝国であり、本史料には大唐帝国の制度を示す文書の原本が完全な状態で含まれています。特に唐の役所から発給された通行許可書「過所(かしょ)」は、唐代の書式例を完全な形で伝えてきた世界で唯一現存する一次史料です。これらの文書の原本は、智証大師円珍(814~891 年)が持ち帰って保管し、1100 年以上にわたって伝えられてきました。
円珍は、853 年から858 年まで遣唐使として唐に留学し、日本での仏教普及に重要な働きをした人物です。日本天台宗の高僧で、第5 代天台座主として園城寺を再興し、天台寺門宗の宗祖と仰がれてきました。9世紀の人物・円珍にまつわる膨大な文書典籍がまとまって伝来したことは、日本の宗教史上においても稀有な例といえます。
「越州都督府過所」*大中9 年(855 年)3 月19 日付
「尚書省司門過所」*大中9年(855年)11月15日付
ユネスコ「世界の記憶」に登録された 『智証大師円珍関係文書典籍-日本と中国の文化交流の歴史-』のうち の資料
<過所(かしょ)とは>
古代中国および日本で用いられた通行許可書。園城寺が所有する智証大師円珍が使用したもの2通が、その唯一の現存実例である。
写真のものは越州都督府交付の過所で、おおむね次の内容がかかれている。
「円珍は、越州の開元寺を出発し、洛陽・長安・五台山を巡礼し、再び開元寺に帰還する予定である。その往還の州県にある関津などで、官司に咎められないよう、交付申請をおこなう。」なおかつ、越州都督府がその内容を審査して発給を認可した旨が記されている。
<『智証大師円珍関係文書典籍-日本と中国の文化交流の歴史-』の概要>
■名 称:智証大師円珍関係文書典籍-日本と中国の文化交流の歴史-
(ちしょうだいしえんちんかんけいもんじょてんせき)
■構 成:
・国宝「智証大師関係文書典籍」(46 件) *宗教法人園城寺/滋賀県大津市 所有
・国宝「五部心観」(1件) *宗教法人園城寺/滋賀県大津市 所有
・国宝「円珍関係文書」(8件) *東京国立博物館 所有
・国宝「円珍贈法印大和尚位並智証大師諡号勅書」(1件)*東京国立博物館 所有
■今後のイベント等:
1. 滋賀県文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」特別講座
【演題】智証大師円珍の足跡と「世界の記憶」(仮題)
【日時】令和5年7月27日(木)14:00~
【会場】コラボしが21(大津市打出浜2-1)
【講師】福家俊彦氏(園城寺長吏)
2. 特別展
登録される文化財の一部の特別公開展示をおこないます。
・園城寺文化財収蔵庫(2023年5月25~7月2日)
・大津市歴史博物館(2023年7月4日~7月30日)
<三日月大造 滋賀県知事コメント>
本県大津市所在の園城寺が所有される国宝2件が、「智証大師円珍関係文書典籍―日本と中国の文化交流の歴史―」としてユネスコ「世界の記憶」に登録されました。大変喜ばしいことであり、1100 年の長きにわたって文化財の保護と継承に取り組んでこられた園城寺の皆様の御努力に、心から敬意を表します。
今回の登録は、平安時代初期に宗祖・智証大師円珍上人が中国への命がけの旅をへて持ち帰られた大切な古文書や典籍類が、度重なる戦乱や災害をくぐり抜けて守り継いでこられた結果、世界に唯一現存する貴重な記録として認められたものであり、滋賀県民にとりましても大きな喜びです。
今回のユネスコ登録が県内外に広く知られることで国際友好や文化交流の歴史が未来へ伝えられるとともに、地域の文化や観光の振興に一層貢献していくものと期待しております。
今後とも皆様と力を合わせ、この貴重な文化遺産が末永く受け継がれていくよう、支援を続けてまいります。
<ユネスコ世界の記憶とは>
世界的に重要な記録物への認識を高め、保存やアクセスを促進することを目的とし、ユネスコが1992年に開始した事業の総称。本事業を代表するものとして、人類史において特に重要な記録物を国際的に登録する制度が1995年より実施されている。
登録にかかる審査は2年に1回で、1か国からの申請は2件以内とされている。国際諮問委員会(IAC)の勧告に基づき、ユネスコ執行委員会において決定される国際登録のほか、「世界の記憶」アジア太平洋地域委員会(MOWCAP)等が決定する地域登録がある。
【目的】
・世界的に重要な記録遺産の保存を最も相応しい技術を用いて促進すること
・重要な記録遺産になるべく多くの人がアクセスできるようにすること
・加盟国における記録遺産の存在及び重要性への認識を高めること
【対象】 手書き原稿、書籍、新聞、ポスター、地図、映画・フィルム、写真、デジタル記録等
【登録状況】 国際登録:429件、地域登録(MOWCAP):65件 *2022年12月現在
<日本におけるユネスコ「世界の記憶」 登録資料一覧>
A)国際登録
滋賀県大津市にある天台寺門宗の総本山・三井寺(園城寺)が所有する国宝「智証大師関係文書典籍」と国宝「五部心観」の2件が、5月25日のユネスコ執行委員会を経て、「ユネスコ・世界の記憶」に『智証大師円珍関係文書典籍-日本と中国の文化交流の歴史-』の一部として登録が決定しました。
今回登録された世界の記憶は、9世紀における日本と中国の文化交流の歴史を物語る史料群です。当時の中国・唐は東アジア世界に影響を及ぼす大帝国であり、本史料には大唐帝国の制度を示す文書の原本が完全な状態で含まれています。特に唐の役所から発給された通行許可書「過所(かしょ)」は、唐代の書式例を完全な形で伝えてきた世界で唯一現存する一次史料です。これらの文書の原本は、智証大師円珍(814~891 年)が持ち帰って保管し、1100 年以上にわたって伝えられてきました。
円珍は、853 年から858 年まで遣唐使として唐に留学し、日本での仏教普及に重要な働きをした人物です。日本天台宗の高僧で、第5 代天台座主として園城寺を再興し、天台寺門宗の宗祖と仰がれてきました。9世紀の人物・円珍にまつわる膨大な文書典籍がまとまって伝来したことは、日本の宗教史上においても稀有な例といえます。
「越州都督府過所」*大中9 年(855 年)3 月19 日付
「尚書省司門過所」*大中9年(855年)11月15日付
ユネスコ「世界の記憶」に登録された 『智証大師円珍関係文書典籍-日本と中国の文化交流の歴史-』のうち の資料
<過所(かしょ)とは>
古代中国および日本で用いられた通行許可書。園城寺が所有する智証大師円珍が使用したもの2通が、その唯一の現存実例である。
写真のものは越州都督府交付の過所で、おおむね次の内容がかかれている。
「円珍は、越州の開元寺を出発し、洛陽・長安・五台山を巡礼し、再び開元寺に帰還する予定である。その往還の州県にある関津などで、官司に咎められないよう、交付申請をおこなう。」なおかつ、越州都督府がその内容を審査して発給を認可した旨が記されている。
<『智証大師円珍関係文書典籍-日本と中国の文化交流の歴史-』の概要>
■名 称:智証大師円珍関係文書典籍-日本と中国の文化交流の歴史-
(ちしょうだいしえんちんかんけいもんじょてんせき)
■構 成:
・国宝「智証大師関係文書典籍」(46 件) *宗教法人園城寺/滋賀県大津市 所有
・国宝「五部心観」(1件) *宗教法人園城寺/滋賀県大津市 所有
・国宝「円珍関係文書」(8件) *東京国立博物館 所有
・国宝「円珍贈法印大和尚位並智証大師諡号勅書」(1件)*東京国立博物館 所有
■今後のイベント等:
1. 滋賀県文化財講座「花湖さんの打出のコヅチ」特別講座
【演題】智証大師円珍の足跡と「世界の記憶」(仮題)
【日時】令和5年7月27日(木)14:00~
【会場】コラボしが21(大津市打出浜2-1)
【講師】福家俊彦氏(園城寺長吏)
2. 特別展
登録される文化財の一部の特別公開展示をおこないます。
・園城寺文化財収蔵庫(2023年5月25~7月2日)
・大津市歴史博物館(2023年7月4日~7月30日)
<三日月大造 滋賀県知事コメント>
本県大津市所在の園城寺が所有される国宝2件が、「智証大師円珍関係文書典籍―日本と中国の文化交流の歴史―」としてユネスコ「世界の記憶」に登録されました。大変喜ばしいことであり、1100 年の長きにわたって文化財の保護と継承に取り組んでこられた園城寺の皆様の御努力に、心から敬意を表します。
今回の登録は、平安時代初期に宗祖・智証大師円珍上人が中国への命がけの旅をへて持ち帰られた大切な古文書や典籍類が、度重なる戦乱や災害をくぐり抜けて守り継いでこられた結果、世界に唯一現存する貴重な記録として認められたものであり、滋賀県民にとりましても大きな喜びです。
今回のユネスコ登録が県内外に広く知られることで国際友好や文化交流の歴史が未来へ伝えられるとともに、地域の文化や観光の振興に一層貢献していくものと期待しております。
今後とも皆様と力を合わせ、この貴重な文化遺産が末永く受け継がれていくよう、支援を続けてまいります。
<ユネスコ世界の記憶とは>
世界的に重要な記録物への認識を高め、保存やアクセスを促進することを目的とし、ユネスコが1992年に開始した事業の総称。本事業を代表するものとして、人類史において特に重要な記録物を国際的に登録する制度が1995年より実施されている。
登録にかかる審査は2年に1回で、1か国からの申請は2件以内とされている。国際諮問委員会(IAC)の勧告に基づき、ユネスコ執行委員会において決定される国際登録のほか、「世界の記憶」アジア太平洋地域委員会(MOWCAP)等が決定する地域登録がある。
【目的】
・世界的に重要な記録遺産の保存を最も相応しい技術を用いて促進すること
・重要な記録遺産になるべく多くの人がアクセスできるようにすること
・加盟国における記録遺産の存在及び重要性への認識を高めること
【対象】 手書き原稿、書籍、新聞、ポスター、地図、映画・フィルム、写真、デジタル記録等
【登録状況】 国際登録:429件、地域登録(MOWCAP):65件 *2022年12月現在
<日本におけるユネスコ「世界の記憶」 登録資料一覧>
A)国際登録
登録年 | 登録名 | |
① | 2011年(平成23) | 山本作兵衛炭坑記録画・記録文書 /筑豊の炭坑で体験・見聞したことを基に描かれた炭坑記録画 |
② | 2013年(平成25) | 御堂関白記(みどうかんぱくき)/平安時代、藤原道長が記した自筆日記 |
③ | 2013年(平成25) | 慶長遣欧使節(けいちょうけんおうしせつ)関係資料 /伊達政宗の家臣・支倉常長がローマで受けたローマ市公民権証書(羊皮紙)や油彩の肖像画、当時のローマ教皇の肖像画、キリスト教の祭具など、江戸時代初期の日欧交渉の実態を物語る。 |
④ | 2015年(平成27) | 舞鶴への生還 /1945~1956 シベリア抑留等日本人の本国への引き揚げの記録 |
⑤ | 2015年(平成27) | 東寺百合文書(とうじひゃくごうもんじょ) /京都の東寺(教王護国寺)に伝えられた日本中世の古文書 |
⑥ | 2017年(平成29) | 上野三碑(こうずけさんぴ) /7世紀から8世紀にかけての古代の石碑3基 |
⑦ | 2017年(平成29) | 朝鮮通信使に関する資料 /17世紀~19世紀の日韓の平和構築と文化交流の歴史) |
⑧ | 2023年(令和5) | 智証大師円珍関係文書典籍/日本と中国の文化交流の歴史 |
B)地域登録
登録年 | 登録名 | |
① | 2016年(平成28) | 水平社と衡平社/国境を越えた被差別民衆連帯の記録 |