一般社団法人マツリズムのプレスリリース
また本調査はコロナ禍である2021年に実施した「祭に対する意識調査」の結果を受け、祭り存続の危機的状況を認識したところから、今後の持続可能な祭りの未来像を模索するため、祭りの形式や伝統に関する意識についての設問も追加し実施しました。
【調査概要】
対象エリア :全国
対象者 :20歳~60歳の男女 800人(有効回答数)※性年代均等割付
調査期間 :2023年6月3日~6月5日
方法 :インターネット調査
【調査サマリー】
TOPICS ①コロナ明け、祭りに対し好意的な回答が7割。
約7割が「なくなってはならない」、「子供に参加してほしいと思う」と回答
祭り再開について約7割が賛成であることが判明!
コロナ明けの祭りに対してもっとも懸念している点、上位は「感染リスク」、「人混み」、「祭りの規模縮小や質の低下」
TOPICS ②祭りへの参加意欲は全体的に低下。特に40代で顕著。
祭りに「参加したくないと思う」が約7割に増加、前回調査(2021年)よりも約1割増加
40代では「コロナ以前よりも参加したくないと思う」回答が約2割
TOPICS ③祭りの形式について「尊重すべき」、「改善すべき」年代差が顕著に
特定の性別や地域の人に参加が制限される祭りについて、約5割が「背景理解の上、可能な限り改善すべき」と回答
回答には年代差があり、「そのまま尊重すべき」50代以上が約5割、40代以下は約3割
TOPICS ①コロナ明け、祭りに対し好意的な回答が7割 |
① 祭り「なくなってはならない」7割以上、必要性を再認識
九州・沖縄地方では8割以上が「なくなってはならない」と回答
「祭りはなくなってはいけないものだと思いますか。」に対し、「そう思う」「ややそう思う」と答えた人が合計74.0%となり、コロナ禍での前回調査(2021年)よりも3.0%増加しています。地域別では特に中国・四国/九州沖縄地方での意識が高く、中国・四国地方では77.0%、九州・沖縄地方では86.3%と9割近くが「祭りの必要性を感じている」ことが明らかになりました。
② コロナ明け、祭り再開に「賛成」約7割
「祭りが再開されることについて賛成ですか?反対ですか?」という設問では、「賛成」「どちらかと言うと賛成」の合計が66.4%、「反対」「どちらかと言うと反対」の合計11.3%と、再開賛成派が多数となる結果となりました。
③ 「子どもに祭りに参加してほしい」約7割
参加させたい理由1位は、「地域の伝統や日本の文化を体験させたい」
「子どもに祭りに参加してほしいと思いますか。」という設問では、「そう思う」「ややそう思う」と答えた人が合計69.2%となり約7割が「子どもに祭りに参加してほしい」と思っていることが明らかになりました。
「子供に参加してほしい」理由として、「地域の伝統や日本の文化を体験してほしいから(66.5%)」「子ども自身の楽しみや体験学習の場になるから(54.6%)」「他の地域の子どもたちとの交流が深まるから(46.5%)」の順になりました。
TOPICS②祭りへの参加意欲は全体的に低下。特に40代で顕著。 |
④ コロナ禍を経て、祭りへの参加意欲が全年代で低下。特に40代2割は「コロナ以前よりも参加したくない」と回答。
「コロナ禍で外出自粛期間を経て、祭りへの参加意欲はどのようになりましたか。」という設問では、「参加したくない」という回答が64.4%となりました。全体で「参加したい」回答割合は2021年調査※よりも低下し、「参加したくない」の割合は12.3%増加するなど、祭りへの参加意欲低下が見られました。年代別の割合では20~30代において、「コロナ以前より参加したいと思う」が約20%と比較的参加意欲を維持できている傾向が見られるものの、40代では23.8%が「コロナ以前より参加したくない」と回答しました。
※2021年「祭に対する意識調査」(一般社団法人マツリズム実施)
「コロナ収束後に開催される祭りに参加したいと思いますか。」に対する「そう思わない・ややそう思わない」合計割合と比較
⑤ コロナ明けの祭りの懸念点は、「感染リスク」、「人混み」、「祭りの規模縮小や質の低下」
「コロナ明けの祭りに関して、あなたがもっとも懸念していることは何ですか。」という設問では、「感染リスクがまだ残っている(32.0%)」「人混みに慣れていないため不安(16.4%)」「祭りの規模縮小や質の低下(6.4%)」と回答しており、コロナ明けの祭りに関して感染リスクの懸念が消えない結果となりました。
TOPICS ③祭りの形式について「尊重すべき」、「改善すべき」年代差が顕著に |
⑥ 性別や地域に参加が限定される祭りの形式について約5割が可能な限り改善すべきと回答
「参加できる人が特定の性別や地域の人だけに限定されている祭りについて、 あなたはどのように感じますか。」 という設問に対して「昔からの伝統であり、そのまま尊重すべきだと思う」という回答が38.6%、「その趣旨や歴史背景などへの理解は必要だが、可能な限り改善すべきだと思う」という回答が49.0%となりました。年代別では「そのまま尊重すべき」とする回答において50代以上は49.7%、40代以下は31.2%となり、祭りの伝統や形式に対する意識には年代差が見られました。
⑦ 祭りにおいて、人力で行うなどの「伝統を守るべき」3割、伝統より存続を考え「労力を減らすべき」1割
年代別では差のある回答結果に
「神輿について『人力で担ぐ伝統』と『労力を減らすためにトラックで運ぶという新しいアイデア』では、あなたはどちらに賛成ですか」と具体的な変化例についての意識を問う設問では、「人力で担ぐ伝統を守るべきだと思う」という回答が33.1 %、「労力を減らすためにトラックで運ぶ方が良いと思う」という回答が11.3%という結果となりました。年代別で比較すると「人力で担ぐ伝統を守るべき」人力派が20代では21.3%、60代では44.4%。「労力を減らすためトラックで運ぶ方が良い」トラック派が20代では19.4%、60代では5.0%となり、意識の差が見られました。
⑧ 祭りの形式が変化することで神聖さや伝統が失われる?「そう思わない」5割超
「あなたは、祭りの形式が変わることで祭りの神聖さや伝統が失われると感じますか。」に対し、「そう思う」「ややそう思う」の合計が45.2%、「あまりそう思わない」「そう思わない」の合計が54.9%と回答しました。年代別で見ると「そう思う」割合について20代38.8%に対し、60代52.6%となり、祭りの変化に対する意識においても年代で差がある結果となりました。
【調査結果からみえるこれからの祭について(代表理事・マツリテーター 大原 学)】
コロナ明けが宣言され全国の祭りを巡る中で、まず観覧客の多さに驚きました。各地で4年ぶりの祭り本格開催となり、それを待ち望んでいたかのように人々が集まっていてその関心と期待の高さを感じます。さらに、インバウンド需要も戻り外国人の姿も多く、「コロナ前よりも祭りを見に来る人が増えている」と、地元の方々から聞くこともあります。
しかし一方で、祭りの担い手や参加者はコロナ前に比べて少なくなっていることが多く、町会単位で神輿や山車を出すのを止めたり、ルートを短縮するなど規模を縮小したり、神輿を台車に載せて運ぶ光景も見られるようになりました。さらに、少なくなった人員で観光客や警備の対応をしなければならないため、祭りの担い手の負担はますます増えていると感じます。
5月に北陸の漁師町で行われた祭りに参加した際に印象的だったのが、山車に女性が初めて乗ったことです。担い手が足りないという背景があるとは聞いていましたが、これまで伝統的に男性しか乗ってこなかった山車に女性が乗るという選択を地域がしたこと、そして批判を覚悟で一生懸命場を盛り上げていた女性の姿を見て、私は深く感銘を受けました。様々な葛藤を感じる一方、祭りがさらに多様性と彩りに満ちたものになるかもしれないという新しい可能性を感じました。
多くの祭りが再開される今年は、さまざまな地域で分岐点を迎え、「祭とは何か?」を改めて問い直す一年になると思います。
こうした調査がその議論の一助になれば幸いですし、マツリズムとしても何らかのサポートができたらと思っています。
【調査データの提供について】
今回の調査におけるさらに詳しい情報に関して、祭り・地域の担い手、メディア、研究向けに公表予定です。
調査に関する詳細のお問い合わせは一般社団法人マツリズ厶(info@matsurism.com)までご連絡ください。
■一般社団法人マツリズム
マツリズムは「祭りの力で人と町を元気に」をモットーに掲げて活動している団体です。担い手不足に悩む地方の祭りと都市部の若者や外国人をつなげ、祭りの次代への継承と地域活性化を試みる観光事業 ”Ma-tourism” を 軸に、全国で活動を展開しています。また、地域の担い手を対象とした祭りの価値を高めるワークショップや動画作成、祭りの力を活かした企業の人材育成・組織開発支援、教育機関等での講演も行っています。
本社所在地:東京都文京区本郷3-40-10 三翔ビル本郷4階 social hive HONGO
電話番号 :050-5319-9350
代表理事 :大原 学
設立 :2016年11月
活動内容 :「祭りの力で人と町を元気に!」をモットーに、地域の祭りの担い手を応援する団体です。
担い手不足に悩む地域の祭りと都市部の若者や外国人をつなげ、祭り文化の次代への継承と地域活性化に挑戦します。
Mission : 祭りの力で、人と町を元気に
Vision : 多様な人が混ざり合い支え合う感謝と受容の社会をつくる