UWOUWOのプレスリリース
本展で使う和紙障子は、プロジェクターの光が裏側に透過しにくい性質を持っています。この性質を活用し、障子の表と裏に異なる映像を投影します。
《表面投影映像イメージ》
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展覧会の見どころ
本展は両面投影可能な和紙障子プロジェクションマッピングです。
表には、さいたま市内の120の地名と伝説をイラスト映像化し、障子の枠一つ一つにそれぞれ異なる映像を投影します。裏には、さいたま市の現在の風景をコラージュ化した映像を投影します。
過去と現在という相反する要素を同一の障子枠内で表現することにより、特徴がないと言われがちな、さいたま市のアイデンティティを相反する時間軸から捉え直す試みです。
これにより、鑑賞者は表現や土地の核の部分に触れることを通じて、自身の視野が拡がるような新しい体験を得ることができるでしょう。
両面投影可能な和紙障子装置
和紙の中では厚口で知られる2枚の鳥の子和紙の間に、越中染紙の黒を挟み込み、映像光を後ろへ通さない両面投影可能な映像装置としました。通常片面だけのプロジェクションマッピングが多い中で、両面を使った障子のプロジェクションマッピングは珍しく、Google検索で調べた中では類似の事例は出てきませんでした。
さいたま市内120の地名や伝説を映像化
「埼玉県地名誌 名義の研究」や「日本歴史地名大系11 埼玉県の地名」や合併前の市史を元に120の地名や伝説に基づいた画像を画像生成AIで3000枚以上作成し、そこから120枚抽出しました。それらを動画化し、1マスごとに実際の地名の位置に基づいてマッピングしています。今では失われてしまった古い土地の様子が地名から垣間見えます。
さいたま市出身作家による地元が題材の芸術作品
作家が長い間、さいたま市内に住む中で撮りためた写真や動画をコラージュ化し、映像投影します。
タイトル由来(大宮曼荼羅)
曼荼羅は密教の世界認識を示した図のことを指します。「大宮曼荼羅」とすることで、その地域を表現した映像作品であることを示唆しつつ、多種多様なものが共存していることを表すタイトルとしてつけました。
《表面投影映像イメージ》
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展覧会フライヤー
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作家コメント
私は、コラージュを用いた映像表現を通じ、展示地域が持つ歴史や文化を題材に、相反するものが共存した映像空間「陰陽太極図的メディア空間(後述)」を探求しつつ、映像作品を発表してきました。今回は「相反するものの共存」というテーマに基づいたメディウム(映像装置)を深掘りし「大宮曼荼羅」を発表します。
陰陽太極図的メディア空間とは
考えの発端は「動的平衡」とは生物学者の福岡伸一先生によって提唱された概念にありました。「動的平衡」とは「生命は変わらないために変わり続けている」ということを端的に表現した言葉です。例えば、私たちの体内の細胞は放っておくとエントロピー増大の法則に従い、朽ちてしまいますが、細胞は崩壊する前に自ら壊し、新しい細胞を作ることで、エントロピー増大の法則を先回りしているのです。東洋思想では同様の思想を「陰陽太極図」という図に表してきました。同じことは法隆寺にも言えます。日本最古の建築として知られる法隆寺ですが、建築当初からの部材はどこにも存在しません。少しずつ壊しながら補修し、法隆寺としての存在を保っています。つまり破壊と創造が同時に存在することで、存在を保っているのです。このように生命やあらゆる物事の本質には「相反」が潜んでいます。それとは別に私個人もこの「相反」に強い関心があります。
私が「相反」に強い関心を持っていることに気づいたのは自己の好物を整理した際でした。好きな音楽は悲しい歌詞に明るい曲調のものであったり、人生で最も好きな映画である岡本喜八の「血と砂」では明るい軍楽隊のメロディに乗せ「戦争の虚しさ」を描いています。このような私の「相反」への強い関心と「生命の本質は相反にあり」という言説が一致した時、脳が沸騰するような興奮を覚えました。
そして「相反」の追求こそ、創作や人間存在の本質の一端に迫れるのではないか?美しいものを作れるのではないか?と思い、創作しています。「相反」を的確に表現する手法としてコラージュを用いてきました。コラージュは普段ありえない事物を同一画面上に並列で存在させることが可能です。またコラージュは出来上がった世界観を切り張りすると定義すれば、空間・衣装・音楽等にもコラージュ的創作法は応用可能です。こうして出来上がった映像を「陰陽太極図的メディア空間」と呼称しました。よって今回も、過去と今という相反するものを共存させ、コラージュを表現手法として用いることで、さいたま市の本質の一端に迫りたいと考えております。鑑賞者も相反が共存した空間「陰陽太極図的メディア空間」を鑑賞することによって、表現や土地の核の部分に触れる体験ができれば幸いです。
《表面投影映像イメージ》
映像作家・アーティスト 坂根大悟のプロフィール
1995年大宮市出身。映像作家。学習院大学文学部史学科卒業。その土地の持つ歴史や都市を題材にしながら、相反するものが共存した「陰陽太極図的メディア空間」を探求しつつ、立体、映像、中間媒介物を組み合わせ、作品を制作。2023年文化庁メディアクリエイター育成支援事業に選出。
[個展]
2021年 「遊園的明滅展」高架画廊 神田
[グループ展]
2022年 「六本木アートナイト・オープンコールプロジェクト」六本木ヒルズアリーナ 六本木
2021年「再展」DHU八王子キャンパス 京王多摩センター
2021年「流展」シェアプレイス調布多摩川 京王多摩川
[主な上映]
2021年 「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭 短編入選作品上映」
2021年「カルト国際映画祭 入選作品上映」
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さいたま国際芸術祭の公募プログラムとは
さいたま国際芸術祭の「共につくる、参加する」という趣旨のもと、芸術祭期間中に、市内において自らの事業(プロジェクト)を実施・展開する個人・団体が募集されました。
全部で61件の応募があり、審査会で審議の結果、7件を選出したうちの1件が今回の展覧会「大宮曼荼羅」になります。
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開催概要
名 称|和紙障子プロジェクションマッピング「大宮曼荼羅」
チケット販売サイト|https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02vne9126x931.html
※本チケットはさいたま国際芸術祭のメイン会場・チケットではありません。「大宮曼荼羅」専用のチケットになります。メイン会場のパスポートは本展示ではご使用になれません。またメイン会場の作品をご鑑賞の際は別途料金が必要となりますのでご注意ください。※ご購入後の変更・キャンセルはいたしかねます。
テーマ|過去と現在という相反の共存空間にみるさいたま市
会 期|2023年(令和5年)11月23日(木)〜11月26日(日)[4日間]
入場料|300円 (さいたま国際芸術祭メイン会場チケットはご利用いただけません)
会場|盆栽四季の家(〒331-0804 埼玉県さいたま市北区盆栽町267-1)盆栽四季の家は、東角井光臣家(武蔵一宮氷川神社宮司)の居宅の一部を移築模写復元して作られた和風建築です。周辺には盆栽村や漫画会館(マンガの資料館)、大宮公園も徒歩圏内と観光地が点在しています。
アクセス|東武野田線大宮公園駅より徒歩15分 & JR宇都宮線土呂駅より徒歩15分、無料駐車場9台併設、無料駐輪場あり
開館時間|10:00〜18:00
休館日|なし