MEDEL GALLERY SHUのプレスリリース
MEDEL GALLERY SHUで8月2日より8月14日まで開催
OVERVIEW
なお、本展はアートコレクター・アートウオッチャーの飯島モトハの協力を得て企画しました。5月の企画も大変好評でしたが、本展も話題になることとでしょう。
村田勇気・吉野俊太郎
二人展「RUKA」
2024年8月2日〜8月14日|木曜休廊
13時〜19時|最終日は17時
MEDEL GALLERY SHU
東京都渋谷区神宮前4-28-18
カトル・バン原宿B1
「手」は、その細密動作性と鋭敏な触覚によって、人類の知的生産をより豊かなものにしました。殊に造形芸術における貢献は著しく、それゆえに作り手は創造を代理する「手」をしばしば神聖視し、独立したモチーフとして象徴化してきました。他方そうした素朴な賛美の裏返しとして、手中のモノを自在に操る絶対性が、強大な権力による不可避の強制を換喩することも少なくありませんでした。
パペットアニメーション──静止した人形を少しずつ動かしコマ撮りすることで、自ら動いているかのように見せる映像技法──は、そうした「手」の気配が漂い続ける表現の最たるものと言えるでしょう。「演者」である人形は、作り手による一挙手一動の完全な支配を免れ得ないからです。
パペットアニメーションの牽引者として世界的な名声を博するイジー・トルンカ(Jiří Trnka, 1912-1969)の遺作『RUKA』(1965)では、紛うことなき「手」そのものが登場します。理不尽な政治圧力の寓意であろう「手」が芸術家を手玉に取り悲劇的な末路へと至らしめる筋書きには、当時の作り手を取り巻く社会状況がありありと反映されており、その批判の射程は現在にも有効です。また特筆すべきは、「操演者」として暗躍するはずの「手」が人形と並び立ち「演者」の役割を果たしている点にあります。支配と被支配を明確に峻別できない構造に困惑する鑑賞体験は、作品と作者の関係さえも転倒させる視点をもたらします。
村田勇気と吉野俊太郎は、これまでそれぞれ近代彫刻を参照し、彫刻を成立させるための要件や支持体に注目してきたという共通項を持つ作り手たちです。その文脈において着手した「手」をモチーフとする近作──果たしてこれも造形芸術家として免れ得ない素朴な賛美を含むのかもしれない──で共感した両者が、この度手を結び『RUKA』を主題とした展覧会を手掛けます。どうぞお手柔らかにご高覧ください。
文責:村田勇気、吉野俊太郎
村田勇気|Yuki Murata
吉野俊太郎|Shuntaro Yoshino
飯島モトハ|Motoha Iijima
アンセル・アダムスの孫弟子としてモノクロ写真表現を修め、帰国後はデジタル表現、平面表現、現代美術としての写真に向き合う。「ぬいぐるむ」「フィジカルボディ・コンプレックス」「無礼らか?」などでキュレーションを担当。MEDEL GALLERY SHUでは2023年4月に「ニニフニ(而ニ不二)」を実施。「超えてゆく風景」「うたかたと瓦礫デブリ」「 Red Bull Music Academy Art」などにコレクション貸し出し。アートコレクター・スイーツ愛好家として月刊アートコレクターズなどで連載中。