増加する“在留・長期滞在外国人”という新たな潮流。地域社会、制度、海外事情など、新たな視点が得られる充実したトークセッションをレポート。
ENGAWA株式会社のプレスリリース
ENGAWA株式会社(代表取締役社長:牛山 隆信)は、2024年9月19日(木)に東京ミッドタウン八重洲にて開催された「インバウンドサミット2024」のトークセッション「『インバウンド』の境界線〜在留外国人、VFR、デジタルノマドの重要性〜」に登壇しました。
トークセッションには、世界標準の観光地を目指す北海道ニセコ町の片山健也町長、在留外国人へ向けた生活総合支援サービスを提供する株式会社グローバルトラストネットワークス執行役員の佐藤 彰氏、今回の「インバウンドサミット2024」を運営する株式会社MATCHA 取締役COO齋藤 慎之介氏とともに、当社クロスボーダーマーケティング部シニアマネージャー四方 麻衣子がスピーカーとして登壇しました。今後増加が見込まれる長期滞在する外国人を、地域社会がどのように受け入れ、新たな市場として活性化していくことができるか、意見を交わしました。
■セッション内容要約、発言内容の抜粋
インバウンド=訪日外国人と一言で括られているが、その中には、短期の観光旅行を目的とした旅行客以外の新たなセグメントが台頭してきています。VFR(Visit Friends and Relatives、友人・親族を訪ねる旅行者の略)、デジタルノマド(リモートによる仕事で収入を得ながら長期で海外に滞在する人々)等といった長期滞在者は、近年注目すべきセグメントとして認知されつつあり、今後も大きな市場となることが予想されます。
訪日外国人の多様化する滞在様式に対応し、地域との合意形成をしながら、どのように「観光」を盛り上げていくか、リアルな在留外国人の視点を交え、スピーカーそれぞれの視点からトークが繰り広げられました。
ーーーーデジタルノマドの現状
モデレーター齋藤氏(株式会社MATCHA):
インバウンドを構成する人たちは、短期滞在の旅行者だけではなく、国内に住んでいる方や、最近では「デジタルノマド」という新しいインバウンドを構成するセグメントも世界では注目されている。
◇デジタルノマドのトレンド
世界に3,500万人(2022年時点)存在し、2035年には10億人に到達するポテンシャルがあるとされる。(出典:トラベルボイス)日本では、2024年4月からデジタルノマドを対象とするビザの発給が開始。滞在期間は6カ月間、他申請条件がある。
片山町長:
入国管理に厳しい対応を取る日本において、「デジタルノマド」のような開放的な制度が早期に成立したことは画期的である。一方で海外との競争力を考えると、滞在可能期間に関しては、日本は厳しい(短い)印象なので、将来的には2〜3年の長期間に緩和される望ましいと考えている。
旅行しながらビジネスをする「デジタルノマド」の方たちが増え、地域との交流が活性化することは、楽しく自由な社会になることにつながると期待している。日本全国で、外国の方とも違和感なく交流し文化を高め合うことができる良いきっかけになるのではないか。
四方(ENGAWA株式会社):
受け入れる側としては、言語の壁を感じる可能性もあるが、身振り手振りと日本語ででも伝わることは大きい。
また、長期滞在する在留外国人が、新たな旅行者や滞在者との仲介役となって、コミュニケーションの円滑化に寄与することもあるのではないか。
在留外国人を活用したコミュニケーション支援をしているENGAWA社としても、「デジタルノマド」のような外国人滞在者に選ばれる、住みやすい環境を作ることができるように、当事者の視点での情報発信の重要性を感じる。
ーーーーVFR(Visit Friends and Relatives、友人・親族を訪ねる旅行者の略)の現状
佐藤氏(株式会社グローバルトラストネットワークス):
VFRを誘致する取り組みは、世界的には活況であり、いかにVFRを呼び込むことができるかをテーマとして戦略を立てている国も多い。VFRは、短期旅行者と比較すると滞在期間が長く、その分、滞在地での消費額も大きくなる傾向がみられる。日本でも、VFR向けの販促施策を実施している企業はあり、今後の成長性を感じている。
四方(ENGAWA株式会社):
VFRは、リピーターの方が多いのではないか?リピーターは滞在期間も長く、行動範囲も広がっている傾向があり、日本のマーケットのチャンスがある。海外では、VFR向けの優遇施策も盛んで、市場も確立されている。社員の3分の1弱が外国人のENGAWA社では、その社員を訪ねてくるVFR目的の訪日は日常的であり、日本国内でのVFRマーケットの活性化に期待している。
ーーーーこれから、長期滞在外国人とどのように良好な関係性を構築するか
モデレーター齋藤氏(株式会社MATCHA):
外国人を受け入れていく中での障壁をどう解消できるか、今後増えていく長期滞在者とどう共生していくことができるか、未来への展望を聞かせて欲しい。
片山町長:
ニセコ町では、5,000人の町民のうち、1割程度が42カ国の外国人で構成されている。地域との合意形成には「観光」が地域経済にもたらす効果・貢献を住民にPRすることが大切。懸念されがちなトラブルは、お互いの文化を教え合う作業を丁寧に続けていく「教育」によって解消できる。課題としては、家族単位での移動・長期滞在に対して、子どもの学校や医療面、租税面での制度の質を高めていく必要性を感じている。
今後も、お互いを尊重し合う相互扶助精神、人間の尊厳を大切にする地域社会をつくること、それが、国全体に広がり、多様な文化が交流する開放的な社会になることを目指していきたい。
佐藤氏(株式会社グローバルトラストネットワークス):
コーディネーターをはじめ「人」がコンテンツとなり目的地となり、そこに交流が生まれる。今後のインバウンドを考える上で、日本人が世界を経験する=アウトバウンドすることも大切になってくるのではないか。海外を経験した日本人が、今後増加が見込まれる訪日外国人の受け入れにあたっても力を発揮することができ、インバウンド産業に貢献するのではないかと期待している。
四方(ENGAWA株式会社):
外国人を受け入れるにあたっては、日本に魅力を感じて訪日してくれていることへのリスペクトの気持ちを持ち、身構えず、“特別扱いをしない”、彼らの考え方・捉え方を吸収させてもらい、互いに交換をする心持ちを大切にしている。共有された視点を作っていくことで、日本人と外国人とが交流し、より良い社会を作っていくことができると考えている。
参加者からは、「“在留外国人”や“VFR”を意識する機会はなかったため、新しい概念を学ぶことができた」「外国人と日本人を区別して壁を作るのではなく、生活を共にすることで相互に与え合うことができる社会にしていきたい」といった声があり、長期滞在外国人という新たな視点の気付き、そして、今後の成長性を感じさせる充実した60分のセッションとなりました。
トークセッションの内容をご覧になりたい方は、インバウンドサミット公式サイトよりアーカイブ視聴をお申し込みください。
※「インバウンドサミット2024」に参加申込をした方の限定公開となります。
インバウンドサミット公式サイト:https://inbound-summit.com/
■トークセッション概要
・セッションタイトル:「インバウンド」の境界線〜在留外国人、VFR、デジタルノマドの重要性〜
・開催日時 2024年9月19日(木)16:05-17:05
・登壇者
片山 健也氏(ニセコ町長)
佐藤 彰氏(株式会社グローバルトラストネットワークス(GTN) 執行役員)
齋藤 慎之介氏(株式会社MATCHA 取締役COO)
四方 麻衣子(ENGAWA株式会社シニアマネージャー)
■「インバウンドサミット2024」開催概要
日本中のインバウンドや観光に関わるメンバーが集う日本最大級のカンファレンス。「本物はなにか?」というテーマで、各分野のリーダーによるトークセッションや展示会、参加者同士のネットワーキングを通じて、インバウンド市場に向けた新たな取り組みやアイデアを引き出す機会を提供。
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開催日時: 2024年9月19日(木) 10:00〜19:00
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開催会場: 東京ミッドタウン八重洲(東京ミッドタウン八重洲カンファレンス)
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主催: インバウンドサミット2024実行委員会
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参加者数: 500名以上の会場参加、3500名以上のオンライン視聴申し込み
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オフィシャルサイト:https://inbound-summit.com/
■ ENGAWA株式会社について
日本の価値ある対象を世界の人々に最適に伝え、多くの外国人と日本人が共感し、感動するシーンを創出し続けるマーケティング会社。1970年の発行から50年以上の歴史を持つ英字メディア「Tokyo Weekender」の運営、外国人KOL・インフルエンサーマーケティング、日本の魅力ある商品・サービスを発信するOMOTENASHI Selectionの運営など、海外・インバウンドに向けたコミュニケーション支援を行っています。