~ 5年にわたる商工会の伴走型支援が実を結ぶ ~
熊本県商工会連合会のプレスリリース
熊本県商工会連合会は、全国共通の喫緊の課題である中小企業・小規模事業者の事業承継を強力に推進しています。このたび、令和8年6月1日(月)、阿蘇郡小国町の杖立温泉で長年愛され続けてきた「旅館丸正」において、譲渡側の穴井り香氏(有限会社旅館丸正 代表)と譲受側の小野順平氏(株式会社TOJISM代表 高森町)との間で事業譲渡契約締結式が執り行われました。これは、商工会による約5年にわたる地道な実態調査と伴走型支援が実を結んだ、地域の事業承継の好事例として、全国的なモデルケースとなるものです。
■ 熊本県商工会連合会の事業承継支援への取り組み
少子高齢化・人口減少が進む中、後継者不足による地域の事業者の廃業が社会問題となっています。こうした状況を踏まえ、熊本県商工会連合会は、県内の中小企業・小規模事業者が円滑に事業を次世代へ引き継ぐことができるよう、各地域の商工会と連携した事業承継支援を積極的に推進してきました。
具体的には、会員事業者を対象とした「事業承継に関する実態調査(アンケート)」を実施し、各事業者の将来の意向を早期に把握するとともに、日本政策金融公庫、熊本県事業承継・引継ぎ支援センターや金融機関、弁護士などの専門機関と連携しながら、個々の事業者に寄り添った長期的・継続的な伴走型支援を展開しています。
■ 旅館丸正の事業承継に至るまでの経緯 ◆
◆ 旅館丸正の歴史
旅館丸正は、現代表・穴井り香氏の祖母が「みどりや」の屋号で民宿として開業したことに始まります。昭和30〜40年代の杖立温泉は、関取が訪れるほどの賑わいを見せ、映画館や芝居小屋、芸者衆も軒を連ねる活気あふれる温泉街でした。旅館は代を重ねながら地域に根ざした宿として成長し、湯治客や農閑期の団体客を中心に多くのリピーターに愛されてきました。近年は学生の合宿なども受け入れながら、良心的な価格で朝昼晩3食付き・温泉入り放題というスタイルで地域に親しまれてきました。

◆ 商工会アンケートが浮き彫りにした課題
小国町商工会では、地域の経済基盤を守るため、令和2年1月および令和4年9月の2回にわたり、会員事業者を対象とした「事業承継に関する実態調査(アンケート)」を実施しました。旅館丸正はこの調査をきっかけに、早い段階から将来の事業の在り方について検討を開始。後継者不在という課題を認識した穴井氏は、当初不動産売買の方向で検討していましたが、なかなか進展が見られないなか、商工会を通じて事業承継という選択肢に出会いました。
◆ 専門機関との連携による本格支援と成約
令和7年9月、事業承継・引継ぎ支援センターと商工会による現地訪問が実施されたことを起点として、具体的な譲渡スキームの構築が本格化しました。同年10月には日本政策金融公庫のマッチング支援に登録し、12月には、高森町で「御宿だいこんや」を引き継いだ実績を持つ小野順平氏とのトップ面談が実現しました。その後、弁護士による法的助言を交えた丁寧な協議を重ね、令和8年5月21日の最終協議を経て、6月1日の事業譲渡契約締結式へと至りました。
【支援経緯 主な経過】
・令和2年 1月 第1回 事業承継に関する実態調査(小国町商工会)
・令和4年 9月 第2回 事業承継に関する実態調査(小国町商工会)
・令和7年 9月 事業承継・引継ぎ支援センター、商工会による現地訪問(本支援の起点)
・令和7年 10月 日本政策金融公庫事業承継マッチング支援に登録
・令和7年 12月 承継候補者(小野氏)との初面談
・令和8年 5月 譲渡契約に向けた最終協議(弁護士助言・確認)
・令和8年 6月 1日 事業譲渡契約締結式(旅館丸正にて挙行)
■ 令和8年6月1日 事業譲渡契約締結式の概要
令和8年6月1日、旅館丸正(阿蘇郡小国町下城3397)において、事業譲渡契約締結式が挙行されました。譲渡側の穴井り香氏と譲受側の小野順平氏が出席し、正式に事業譲渡の契約が締結されました。
譲受側の小野氏は令和6年に高森町の「御宿だいこんや」を事業承継した実績を持ち、飲食店(東京・六本木等)での経験もある意欲的な若手経営者です。小野氏は旅館丸正について、「1階を飲食店として活用し、2階は3,000円程度からの素泊まりスタイルを構想している」と意気込みを語っており、旅館としての質を維持・向上させながら新たな魅力を創出することが期待されています。穴井氏は「(小野氏は)目標が明確な方。大変だろうが、こういう若い人が必要。昔の杖立をもう一回見たい」と、次の担い手への厚い信頼と期待を寄せています。

■ 杖立温泉街の再生に向けて
杖立温泉は熊本県小国町に位置する歴史ある温泉地であり、賑やかな歓楽街として九州を代表する温泉街のひとつでした。しかし近年は、近隣温泉地の増加や観光客のニーズの変化、度重なる自然災害などにより、往年の賑わいが失われつつあるのも事実です。
今回の旅館丸正の事業承継は、単なる一軒の旅館の承継にとどまらず、杖立温泉全体の活性化を見据えたものです。小野氏自身も「杖立温泉全体を盛り上げたい」という強い思いを抱いており、穴井氏も「人が多く歩く杖立をもう一回見たい」と願っています。透明で柔らかな泉質を誇る杖立の湯と、新たな経営者を迎えた旅館丸正が、地域再生の核となることが期待されています。

■ 熊本県商工会連合会の今後の取り組み
熊本県商工会連合会は、今回の旅館丸正の事業承継を「早期の課題把握と長期的な伴走型支援」が実を結んだモデルケースとして、県内外に広く発信していきます。地域の伝統と雇用を守り、次世代へとバトンをつなぐ事業承継支援は、地方経済の持続的な発展に欠かせない取り組みです。
今後も、会員事業者に対する定期的な実態調査の実施、日本政策金融公庫、事業承継引継ぎ支援センター、金融機関、専門家との連携強化、そして事業者に寄り添った継続的な伴走支援を通じて、熊本県内における事業承継の円滑化に全力で取り組んでまいります。廃業の危機にある地域の大切な資源を守り、地域経済の活力を次世代へとつなぐという使命のもと、本会は引き続き支援体制の充実を図っていきます。
■会社概要
名 称:熊本県商工会連合会
住 所:熊本県熊本市中央区安政町3-13熊本県商工会館7階
URL :https://www.kumashoko.or.jp/
■本件に関するお問い合わせ先
担当 :経営支援部 特任支援課
TEL :096-325-5161 (受付:平日8時30分~17時15分)
FAX :096-325-7640

