江戸・明治・昭和の激動を越え、人の縁を守り続ける老舗旅館が体現する「おもてなしの神髄」
株式会社 金乃竹のプレスリリース

神奈川県 箱根で旅館5店舗・飲食店4店舗を運営する株式会社金乃竹(本社:神奈川県箱根町 代表取締役社長:八幡 正昭 以下、金乃竹)が運営する、1662年創業(寛文2年)箱根七湯のひとつ・芦之湯の地に創業した「松坂屋本店」。江戸末期には木戸孝允と西郷隆盛が密談を交わし、勝海舟をはじめ多くの志士や偉人が訪れた当館は、常に日本の歴史の渦中に寄り添い続けてまいりました。
第二次世界大戦末期、箱根の地は避難地・疎開地としての役割を担い、当館もまた滞在するドイツ人兵士たちを受け入れた歴史を持ちます。激動の時代にあっても、当館の先代たちは国籍や立場を越え、一人の客人として彼らを温かく包み込みました。館内に今なお残る当時の写真や資料は、過酷な時代の中に存在した「人と人とのぬくもり」を静かに物語っています。
|1通の予約通知から始まった、80年の時を揺り動かす物語

2026年3月16日、ドイツから届いた宿泊予約の備考欄に記されていたのは、胸を打つ言葉でした。
「父は1940年代に船が沈没した後、貴ホテルに約1年間滞在いたしました。1990年代には松坂進様と数年にわたり文通を交わし、2009年には私とパートナーも訪れ、多くの素晴らしい思い出を作ることができました。今、私たちの息子に、父が暮らしたこの場所を見せてあげたいと思っています。船員たちが近くに池を掘ったことさえ覚えています。父や私たちのことを覚えている方がまだいらっしゃるかどうかお尋ねするのは気が引けますが、訪れるのを心から楽しみにしています。」
戦時中に滞在した元ドイツ兵の父親から、2009年に来館した娘様へ。そして今回、その息子様(元ドイツ兵の孫様)へと受け継がれた旅。生きた証と記憶の池をその肌で確かめたいという世代を超えた想い、そして「自分たちの記憶が途絶えていないか」という娘様の切実な問いかけが、当館に届いたのです。
|先代の思いを継ぐ「大甥」が迎えた、時を超えた再会

問いかけに応えたのは、戦時中にドイツ兵を受け入れた当時の館主の孫にあたる松坂(現スタッフ)でした。松坂は現在、当館の設備スタッフとして、ドイツ兵たちがかつて滞在した歴史ある建物の維持や、江戸時代から湧き続ける自家源泉を守るため、日々裏方として奮闘しています。普段は接客の表舞台に立つことのない松坂ですが、この日は英語通訳スタッフを交え、「松坂家の者」としてご家族を特別にお迎えしました。

歓談の席で、松坂はご家族にあるものを手渡しました。それは、当時の館主(松坂の祖父)が語った回顧録『箱根のドイツ兵の話 松坂康さんの回顧録』を、この日のために数ヶ月かけてドイツ語に翻訳した資料でした。
予想もしなかった父の足跡の記録を受け取り、ご家族は深い感銘を受けておられました。静かな室内に飾られた当時の写真や資料を囲み歓談したのち、一行はメッセージにも記されていた場所へ足を伸ばしました。

向かったのは、戦時中にドイツ兵たちが掘ったと語り継がれている「阿字ヶ池(あじがいけ)」です。静かに水をたたえる池のほとりで、娘様はかつて父がここで汗を流し、この景色を眺めていた日々に想いを馳せられました。言葉や国境を越え、確かに生きた温もりがそこにあることを、ご家族全員で肌で感じていただく時間となりました。
|当事者たちのコメント
■ご来館された娘様のコメント

「私は以前、ここを訪れたことがありましたが、今回は1940年代に息子の祖父が過ごした場所を息子自身に見せたいと思い、約17年ぶりに再訪いたしました。当日は温かいおもてなしとともに、当時の貴重な写真を見せていただき、私どもの疑問にも真摯に答えていただきました。 さらに、かつて父たちが掘った池や、当時この地で亡くなったドイツ兵のお墓にも案内していただき、松坂さんが今も頻繁にお墓参りをし、大切に手入れをされているという事実には胸が深く打たれました。 子供の頃、父に『これまで訪れた国の中でどこが一番魅力的だった?』と尋ねた際、父は『日本』と答えていました。その理由が、今回の滞在を通してとてもよく分かりました。」
■松坂屋本店スタッフ・松坂のコメント

「最初、フロントスタッフからお迎えの打診を受けた際は『当時の写真ならお見せできます』と軽く答えていました。しかし日が経つにつれ、祖母や父から聞いていた当時の記憶が頭から離れなくなり、『2009年に来館されているなら、写真はすでに見ているはず。何か他にできることはないか?』と考え、祖父が残した回顧録『箱根のドイツ兵の話』の存在を思い出しました。お二人が来られるまでの数ヶ月間、AIを活用しながら慎重にドイツ語へ翻訳し、当日お渡しすることができました。また、当時唯一この地で亡くなった、ツェーレル・テーオ氏のお墓へもご案内し一緒に手を合わせましたが、異国の地で眠る氏も、きっと喜んでくれたのではないかと思います。ほんの数時間でしたが、自分が伝え聞いてきたことを直接お話しできたことを大変嬉しく思い、後日、当時のドイツ兵たちと交流した祖父母や大叔父たちが眠る墓前に、この素晴らしい再会を報告いたしました。」
|なぜ、松坂屋本店は「歴史の記憶」を発信するのか

一見すると個人の思い出話のようにも見えるこの物語は、私たちが創業以来364年間、一貫して守り続けてきた「おもてなしの思想」の象徴です。
現代の旅行において、綺麗な客室や美味しい食事を提供するホテル・旅館は数多く存在します。しかし、「時代や国境を越えて、お客様とご家族の人生の記憶を守り続ける場所」になり得る施設は決して多くありません。
松坂屋本店が大切にしているのは、単なる「一泊の宿泊場所」としての価値ではなく、「世代を超えて人生に寄り添う、帰ってこられる場所」としての価値です。激動の時代に先代たちが国境を越えて客人を受け入れたように、当館はこれからも、世界中からお越しいただく一人ひとりのお客様の物語に寄り添い、何年経っても「お帰りなさい」と迎える唯一無二の宿であり続けます。
|金乃竹リゾートについて
金乃竹リゾートは、1947年に神奈川県箱根町仙石原で最初の温泉旅館を開業いたしました。1999年には、当時ではまだ珍しい貸切露天風呂による「非日常」を通して、温泉旅館の新たな楽しみ方と価値を創出してまいりました。現在は、5つの旅館施設と4つの飲食店の事業を展開するとともに、新規事業であるクラフトビールなどの多角化や、これまでのターゲットを変えた新たな旅館施設の開業など、ポートフォリオの構築を進めています。これにより、外部環境の変化に対応して持続的な成長を目指します。
