【川久ミュージアム】南方熊楠が保全した神島を眼の前に、いにしえの時代からの黒潮海流を通じたアジアと日本列島の「水」を巡る交流を示す物語。『水の越境者たち』展の開催決定。

Karakami HOTELS&RESORTS株式会社のプレスリリース

Karakami HOTELS&RESORTS株式会社(本社:東京都・代表取締役社長:唐神耶真人)は、川久ミュージアム(和歌山県南紀白浜「ホテル川久」内)にて、2024年9月6日(金)から同年10月14日(日)までの間、「水の越境者たち」展を開催いたします。和歌山県紀南出身の大博学者・南方熊楠が保全した神島を目の前に、いにしえの時代から黒潮海流を通じたアジアと日本列島の「水」を巡る交流を示す物語。2021年に大阪船場で行われた「船場アートサイトプロジェクト」で実施された展覧会『水の越境者(ゾーミ)たち~メコン地域の現代アート~』を紀南テイストに再編集し、紀南アートウィーク実行委員会がディレクション、キュレーションを担当したオリジナル展覧会を是非ご鑑賞ください。

2021年に大阪船場で開催された『水の越境者(ゾーミ)たち~メコン地域の現代アート~』。大阪とアジアの人々に通底する共通項を発見し、大阪/アジアからグローバリゼーションや資本主義のあり方を再提示した展示会が、紀南の息吹を浴びて生まれ変わります。
本展では、クヴァイ・サムナン(プノンペン在住)やティタ・サリナ(ジャカルタ在住)等の東南アジアを代表するアーティストの海や河川を巡る多義的な作品とともに、主に黒潮・対馬暖流域の浦々で滞在を重ねながら、海を基点とした人間や世界のあらわれを母胎にした作品を制作し続ける山内光枝(福岡在住)の作品との応答によって、アジアと日本列島において古くからあって、そして、新しくもある「水」を通じた交流の可能性を提示します。

《アーティスト紹介》

@Photo by Courtesy of the Artist

◆ 山内 光枝(YAMAUCHI Terue)
プロフィール:
 1982年生まれ、福岡県在住。
 映像、写真、ドローイング、インスタレーションによる作品を手掛ける。
 2006年ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ(イギリス)BAファインアートを卒業。2013年には済州ハンスプル海女学校(済州島・韓国)を卒業後、2015年に文化庁新進芸術家海外研究員として、2016年に国際交流基金のアジアセンター・フェローとしてフィリピンに滞在。初の長編映像作品が東京ドキュメンタリー映画祭2019で奨励賞を受賞。最近作「信号波」(2023)は日本統治下の釜山に暮らした自身の家族史に向き合うセルフドキュメンタリー。
 近年の主な展覧会に、「日本パビリオン」光州ビエンナーレ、韓国(2024.9予定)、「泡ひとつよりうまれきし 山内光枝展」対馬博物館(2024)、「水のアジア」福岡アジア美術館、福岡(2023)、「Spinning East Asia SeriesⅡ: A Net (Dis)entangled」Center for Heritage Arts & Textile: CHAT、香港(2022)がある。
展示作品:「潮汐2012-2021」
 2面のスクリーンに向かい合う鏡面のように映し出されるのは、東南アジアから東アジアの黒潮・対馬暖流域でこれまで作者が親交を深めてきた、素潜り漁を営むひとびとである。彼らがそれぞれ拠点とする海辺で呼吸する姿が、順々に登場する。潮の満ち引きのごとく繰り返される息吹は、それぞれの海に向かって、彼方の見えない何かに向かって、互いに向かって、あるいは彼ら自身へと向かっているようである。
 済州島と福岡の海女浦から海峡を挟んで呼吸しあう二人の女性を捉えた2012年の「潮汐|ムルテ」を原型とし、世界的なパンデミックを挟みながら10年を経て制作された本作は、いま、それぞれの場において再び世界を呼吸すること、世界に息づくということ、この世界で息を引き継ぐということを、もう一度想像する力を届けてくれる。

@Photo by Courtesy of the Artist

◆ティタ・サリナ(Tita Salina)
プロフィール:
 1973年生まれ、ジャカルタ在住。
 インドネシア人アーティストのティタは、無秩序な都市開発と公害等のジレンマに直面する巨大都市ジャカルタの公共空間に対して、パフォーマティヴな介入を通して想像力を喚起させる。
現在、パートナーでもあり、アーティストでもあるイルワン・アーメットとともに、自然災害が最も発生しやすい環太平洋火山帯の地政学的混乱、根強いイデオロギー的な暴力によって引き起こされる課題に対するプロジェクトを展開している。
 ティタは、国内外のレジデンスや展覧会に参加しながら、惑星的な懸念について思索し、人間と自然の関係やエコロジーに関連した芸術表現を行っている。
展示作品:「1001番目の島-群島の中で最も持続可能な島」
 巨大な防波堤は、ジャカルタの都市部の洪水に対する政府の解決手段であり、それは新しい住宅地を開くことにもなった。この計画は「再生」された土地から作られた17の人工島を統合し、17,000以上ある世界最大の群島の一つに加えられることになった。ジャカルタは、いまだにゴミ処理や汚染された水資源に悩まされている。
 アーティストは地元の漁師たちと一緒に、海ゴミやプラスチックのゴミを集め、それを別の種類の人工島に変貌させる。
 アーティストと漁師が借りた船の助けを借り、その人工島は、埋め立てられた島々とサウザンド諸島(セリブ諸島、ジャカルタ沿岸の北に位置する110の島々の総称)の間に浮かべられた。諸島の中で「最も持続可能な島」であるこの作品は、埋め立ての問題と、海を窒息させ、地元の伝統的な漁師の将来の生活を脅かすゴミの問題に懸念を示している。

@Photo by Courtesy of the Artist

ゴック・ナウ(Ngoc Nau)
プロフィール:
 1989年生まれ、ホーチミン在住。
 ベトナムの現代アーティストとして近年世界的に注目されるナウは、3Dソフトウェアとオープンソースの素材を使い、没入感のある視覚体験を生み出している。ビデオ・インスタレーションにとどまらず、ライトボックス、ホログラムや拡張現実など、他の最新テクノロジーの取り込みにも余念がない。彼女の生活体験や多様なコミュニティからのインスピレーションを踏まえて、ナウの作品は地域の文脈に深く根ざした視点を具現化し、世界中の観客への共感を呼び起こそうとする。
 ナウの作品は、一般的な歴史的・社会的ナラティブの再検証を促しつつ、現代社会の発展の複雑さと問題の本質を掘り下げることによって、過去に対する認識と未来へのヴィジョンを新たな方向へと向かわせる。
展示作品:「信仰のために踊るのか?」
 本作は、初期のベトナム共産党に禁じられた聖母道の代表的儀式であるレンドンを扱う。この儀式は、霊媒師を通じてベトナムで信仰される様々な神に出合うものであるが、作中に登場する舞い踊る女性たちは現代の技術により抽象化された姿で描かれている。現代的なポップな音楽に編集されたリズムと共にかつての宗教的儀式は、現代的な飽くなき欲望の信仰に変化していく様を描こうとしている。

@Photo by Courtesy of the Artist

クゥワイ・サムナン(Khvay Samnang)
プロフィール:
 1982年生まれ、プノンペン在住。
 カンボジアを代表する現代アーティストのクゥワイ・サムナンは、クメール古来の伝統的文化儀式や神話を踏まえて、ユーモラスで象徴的なジェスチャーを駆使しつつ、歴史や現在の出来事に対する新しい視点を提示する。
 あらゆるメディアを包括する彼の作品は、植民地主義とグローバル化における人道的な問題、環境や環境を巡る問題や生態系への影響について焦点を当てている。
展示作品:「ポピル」
 本作は、ハウス・デア・クンストでの個展(2019年 、ドイツ)の際のコミッション作品として制作された。
 二人の踊り手は、クメールの伝統的舞踏である「ローバム・カバッチ・ボーラン」の仕草に特徴付けられる。踊り手は漁網に使用される蔓で編まれた龍を象徴するマスクを被っており、二人を取り囲む景色は、海辺、湿地など多様に変化していく。背後には開発途上の工場のような建物も見え、親密な関係にありながらもカンボジアの環境に大きな影を落とす中国との関係を象徴的に表しているようでもある。

@Photo by Courtesy of the Artist

リム・ソクチャンリナ(Lim Sokchanlina)
プロフィール:
 1987年生まれ、プノンペン在住。
 カンボジアを代表するアーティストの一人であるリム・ソクチャンリナは、物事や精神の境界を思索し続けている。
 リムは、写真、映像、インスタレーション、パフォーマンスを用いた、ドキュメンタリーとコンセプチュアルな実践を横断する作品を制作し続けている。
彼は、世界との関係におけるカンボジアの様々な社会地政や環境的変化に目を向けながら、それらを芸術表現に反映している。
展示作品:「海への手紙」
 本作の「海への手紙」は、2020年のシンガポールビエンナーレの出展作品であり、海底でカンボジア人漁民の物語を読み上げる。
 タイとカンボジア国境の海底で声なき声を発する男がいる。彼の声は、気泡として海の全体に広がり、過去の海民達と海の精霊に届くのだろうか。

@Photo by Courtesy of the Artist

メッチ・チューレイ&メッチ・スレイラス(Mech Choulay& Mech Sereyrath)
プロフィール:
 1992年(チューレイ)、1993年(スレイラス)生まれ、プノンペン在住。
メッチ姉妹は、カンボジアのカンダール州で生まれの若手アーティスト・ユニットである。
チューレイは、映像作家、ジャーナリストであり、ジャーナリズム、写真、映画の分野で豊富な経験を持つ。2024年にシンガポールのObjectifsで個展を開催した。
 他方、スレイラスは、「Element」、「Gratitude」、「When the Sun Reaches the River」などの写真シリーズを制作し、2023年の香港国際写真祭に出展している。このような写真作品のほかに、短編映画《The Expired》等も制作し、2023年の釜山映画祭で上映会を行った。
展示作品:「母なる川」
 赤い布で覆われた身体は、水辺を浮遊し、彷徨い、時に人間らしからぬ造形を生み出し、彫刻的な要素も見え隠れする。川底の泥を貪り食い、果てはそれを懐妊した女性のように、腹に宿る命を愛撫し、最後には泥の塊としての赤子を吐き出す。水に浮遊する赤い布の不気味さは、時に血のようにも見え、背景に見える近代化する都市から追いやられるカンボジアの自然環境そのものの声のようにも見える。

《「水の越境者たち」展 詳細》
【開催期間】2024年9月6日(金)~10月14日(日)
【主催】川久ミュージアム
【ディレクション/キュレーション】紀南アートウィーク実行委員会
【協力】アウラ現代藝術振興財団、Artport株式会社
※ 展示会開場時間・料金等は川久ミュージアムWebサイトよりご確認下さい。
(URL:https://www.museum-kawakyu.jp/

■ 川久ミュージアム(ホテル川久)のご紹介

 1989年、日本がバブル絶頂期に始動された「世界の数寄屋」を作るプロジェクト「ホテル川久」。建築家永田祐三氏が監修し、中国、ヨーロッパ、イスラム、日本と、世界各地の匠の技術を融合させた同ホテルは、総工費400億円に上り、延床面積2万6000平米、建築期間は2年を費やしました。

 外壁を飾るのは、中国の紫禁城にのみ使用を許された鮮やかな「老中黄」の瑠璃瓦。館内は、イタリアの職人によって敷き詰められた緻密なローマンモザイクタイルの床や、フランスの人間国宝ロベール・ゴアールの手による壮大な22.5金の金箔ドームに加えて、ロビーの壁面には、メトロポリタン美術館の鑑定で2世紀頃のシリアの鹿と豹のビザンチンモザイク画が埋め込まれており、野外には、イギリスの彫刻家バリー・フラナガンによる幅6メートルものうさぎのブロンズ像など、美術的価値の高いアーティストを世界中から招集し造られた夢の建築です。左官職人・久住章が主宰する「花咲団」による疑似大理石でつくり上げた1本1億円の24本の柱や、土佐漆喰で仕上げたホテルエントランスの大庇ほか、陶芸家・加藤元男による信長堀や陶板焼きのタイル壁、煉瓦職人・高山彦八郎による煉瓦模様など、日本の匠も数多く参加しています。世界中の技術や文化を組み合わせたような建築は、全ての作品の調和がとれている摩訶不思議な空間となっております。

 また、館内には、創業当時オーナーが世界中から買い付けたオーナーズコレクションとして、中国清代前期の七宝焼きや陶器、ダリ、シャガール、横山大観などの作品も展示されております。

 1993年には、優れた建築作品と設計者に贈られる「村野藤吾賞」を受賞。そして2020年には、金箔表面積でギネス世界記録™に認定されました。そんな建築とアートの融合体であるホテル川久がその歴史価値の保存と伝承を目的とし、2020年、川久ミュージアムとしてオープンいたしました。

《施設概要》
 【会場】川久ミュージアム(ホテル川久)
 【住所】和歌山県西牟婁郡白浜町3745
 【電話番号】0739-42-2662
 【開館時間】10:30~18:00(最終入場は閉館30分前まで)
 【料金】一般1,000円 / 高大生800円 / 中学生以下無料(学生証の提示必須)
  ※ 詳しくはホテル川久までお問い合わせください。
 【公式サイト】https://www.museum-kawakyu.jp/

<本件に関するお問い合わせ>
Karakami HOTELS&RESORTS株式会社 広報担当 新田(ニッタ)まで
TEL:011-222-5032 FAX:011-222-5223 Mail:y-nitta@karakami-kankou.co.jp

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