ホームケア10万人、リネンサプライ2,800社、社員約3,000名を支える現場から、人×AI協働型の高生産性モデルを構築
株式会社ヤマシタのプレスリリース
介護用品(福祉用具)レンタル・販売およびリネンサプライ事業を行う株式会社ヤマシタ(本社:静岡県島田市、代表取締役社長:山下和洋、以下「ヤマシタ」)は、AIを前提とした新たなデジタル戦略「AIファーストDX方針(2025–2027)」を始動しました。テーマは、「労働集約だからこそAIで人の価値を最大化する」。MCPを軸とした基幹システム新アーキテクチャと、AIを社員のように育成・管理する「AIエージェントHR構想」により、3,000名規模の現場起点で高生産性モデルを構築します。

■ 背景:介護・リネンという“人が支える現場”を、次世代の高生産性産業へ
ヤマシタは、約3,000名の社員を擁し、在宅介護を受ける方へ介護用品レンタル・販売を行うホームケア事業と、病院・福祉施設・ホテルへリネンを洗濯・供給・リースするリネンサプライ事業を展開しています。ホームケア事業では現在、全国約10万人の利用者を支え、専門相談員が個別の身体状況・住環境・生活動線に合わせて最適な介護用品プランを設計しています。リネンサプライ事業では、全国6拠点の直営工場を基盤に、約2,800社のホテル・医療・介護施設へ安定供給を続けています。
介護用品の選定は利用者ごとの状況に応じて細かな判断・調整が求められ、現場スタッフの経験や気づきが価値を大きく左右する“人間中心のプロセス”が多く存在します。一方、リネンサプライ事業でも、施設の稼働状況や衛生基準、患者・利用者の属性などに応じて必要量や補充のタイミングが変動するため、現場の状況把握や調整力が不可欠です。
ヤマシタがAIを導入する目的は、こうした人の価値を代替することではなく、AIとの協働によって一人ひとりがより高い付加価値を生み出せる環境をつくることにあります。記録や照会、推論など周辺業務をAIに担わせることで、社員が本来注力すべき専門性・判断・対話に集中できるようにし、介護用品レンタル・リネンサプライという生活インフラ産業を次世代の高生産性産業へと進化させていきます。
■ AIファーストDX方針(2025–2027)

① 全社共通基盤:AIを誰でも扱える環境へ
全社員がAIを当たり前に使えるようにするために、AIに教える役割を担う「ローコード・ノーコード開発者」や、データを業務に活かせる人財の育成を進め、あわせて業務の見直しやデジタル化を進めています。
現場でのアプリ開発は、これまでのローコード開発を土台に、AIの進化によって“誰でもつくれる”ノーコード化がさらに進むことで、社員自身が必要な業務アプリや作業手順を自動生成できる環境を整えていきます。また、日々の業務で生まれる知識やデータをNotionや生成AI対応のデータ基盤に整理し、AIが読み取りやすい形で蓄積することで、全社として「AIを使う側」から「AIを育てる側」へと文化を転換していきます。
② ホームケア事業:基幹システムの内製刷新でAIと協働する未来を実現
ヤマシタのホームケア事業は、介護用品レンタル・販売を通じて、在宅で暮らす全国約12万人の利用者を支えています。介護用品を通じた在宅介護の支援には、利用者の身体状況や住環境、生活動線などを踏まえた状態把握・用具提案・設置・フォローアップなど、多岐にわたる業務フローがあり、現場で蓄積されてきたノウハウが事業の付加価値の中心を成しています。
こうした業務をAIと協働できる形へ進化させるため、ヤマシタでは現場で使われるKPI・業務プロセス・データ構造をAIが理解できる形に整理・再設計する取り組みを本格的に進めています。この“AIが理解し扱える共通基盤”を実装するため、基幹システムを自社でつくり直し、社内外のAIやサービスとつながりやすい仕組みを採用することで、在宅介護に必要な新しいサービスや業務をスピーディーに追加できる柔軟な土台を整えていきます。これにより、既存の介護用品レンタルの効率化に加え、将来的には新サービス・新規事業を迅速に立ち上げ、“在宅介護プラットフォーマー”(※)へと発展できる基盤を整備していきます。
※ヤマシタが目指す在宅介護プラットフォーマーとは
ヤマシタは、介護用品レンタルサービスを軸に、在宅介護における多様なニーズに対してテクノロジーを活用したソリューションを提供する 「在宅介護プラットフォーマーへの変革」 にチャレンジしています。具体的には、EC/アプリ/IoT/ロボット・デバイスなどのデジタルツールを通じて、住宅、保険、食、エンターテインメントといった異分野を横断し、あらゆる在宅介護のニーズに対応できる体制を整えることを目指しています。
③ リネンサプライ事業:2,800社を支える供給インフラの高度化
ホテル・病院・介護施設へリネン類を供給するリネンサプライ事業では、在庫管理、需要予測、配送計画、品質管理などの主要プロセスとAIの連携を進め、高効率化を図ります。基幹領域は内製システムで強化し、周辺領域はSaaSでスピードを高めるハイブリッド構造で、2030年に向けた“高効率×高品質”の供給体制を目指します。
■ 基幹システムの内製刷新:MCP × モジュラーモノリスで「AIが働けるシステム」を構築
ヤマシタは、ホームケア事業における基幹システムの刷新を内製で進めており、その中心にMCP(※)とAPIを標準インターフェースとして据えた設計思想を採用しています。これにより、AIエージェントが業務文脈を理解し、必要なデータへ安全かつ的確にアクセスできる基盤を整えています。
さらに、マイクロサービスを過度に分解しないモジュラーモノリス構造の内製アーキテクチャを採用することで、安全性と拡張性を両立させながら、将来のAIエージェント連携やロボティクス導入にも対応できる“長期運用可能な基幹システム”を構築していきます。
※MCP(Model Context Protocol) とは、AIが社内システムや外部サービスと安全に連携できるようにするための標準的な通信ルールです。これを採用することで、AIが業務上の文脈(コンテキスト)を理解し、必要なデータに適切な範囲でアクセスしながら、人と同じように業務を手伝える仕組みを構築できます。
■現場主導の業務アプリ開発:ROI 1,000%の改善も生まれる土壌が形成
ヤマシタでは、現場で必要とされる業務アプリを、非IT社員がローコードで自ら作る文化が広がっています。一方で、基幹となる難易度の高い領域はデジタル本部エンジニアがプロコードで内製開発する体制を整備しており、トップダウンの基幹刷新と、ボトムアップの現場改善が両輪で回る構造が確立しつつあります。ローコードツールを使用してこれまでに100名以上が業務アプリ開発を実践し、現場から70本を超えるアプリが生まれています。記録や照会といった日常業務の効率化や、現場の課題に即した小さな改善が数多く実装されており、投資回収(ROI 1,000%以上)を実現した事例も出ています。
今後は、AIの進化によって業務アプリのノーコード生成がより進み、誰もが必要な改善を自ら形にできる環境の構築を目指します。
■ AIエージェントHR構想:AIを“社員”として採用・評価・運用

ヤマシタは、AIを社員のように扱うデジタル部門の「AIエージェントHR構想」を推進します。AIごとに役割・KPI・安全基準・権限範囲を設定し、導入から改善までを一気通貫で管理。将来的にはロボットも同一フレームで統合し、人・AI・ロボティクスが協働する組織モデルの実現を目指します。
詳細はヤマシタデジタル本部長小川邦治の解説記事をご確認ください。
DX戦略とAIファーストのチャレンジ ── MCP × マイクロサービス/モジュラーモノリスで“現場主導DX”を加速し、AIとロボットの時代を迎え撃つ
https://recruit.yco.co.jp/blog/20251029_724/
■ 代表取締役社長 山下和洋 コメント
「生成AIによるグローバルでの同時多発的な変化は、企業経営や業務のあるべき姿だけでなく、活躍し続ける人財像そのものを根本から変えつつあります。当社はこの世界的トレンドにいち早く適応するため、新しいテクノロジーと、それを現場に浸透できる人財の採用を積極的に進め、介護用品レンタルやリネンサプライといった伝統的な労働集約型産業をモダンにアップデートしています。
我々が今後、既存事業の連続成長に留まらず、非連続成長できると考えている理由は2つあります。1つ目は、B2C・B2Bに限らず、営業・SCM(生産・物流)・バックオフィスの全領域で、伝統産業をモダン化できる組織ケイパビリティを当社は保有していること。2つ目は、生成AIの到来により、オペレーション難易度が高いことから敬遠されがちな労働集約型産業が、組織の多層化をしなくても事業マネジメントできるようになったことです。
逆に、生成AIの登場によって、かつて効率的に非連続成長できると考えられていたIT産業こそ、人の介在を必要としない領域が急速に増え、ディスラプト(破壊)されるリスクが高まっています。この状況はむしろ、積み上げていかざるを得ない労働集約型産業にこそ、大きなチャンスがあることを示しています。AIが事業運営上必要な事務作業や情報処理を自動的に担うことで、社員は“人間にしかできない仕事”に集中し、生産性と付加価値を継続的に高められます。さらに、人間とAIが協働することでマネジメントの階層やコストを最小化し、現場・中間マネジャー・経営陣がリアルタイムに連動しながら、顧客ニーズの変化を迅速に組織と社員へ反映できる企業体へ進化できます。
私たちは生成AIなどのDigital領域と、ロボティクスなどのPhysical領域を組み合わせ、人の価値を最大限に引き出せる組織づくりをすることで、事業の進化を加速させていきます。
■株式会社ヤマシタについて
1963年の創業以来「正しく生きる、豊かに生きる」を企業理念に掲げ、リネンサプライ、介護用品レンタル・販売の両事業で業界大手のポジションを確立。全社員の仕事のやりがいと顧客の体験価値を相互に高め合う好循環を強みに、2030年に850億円の売上目標を掲げている。DXにも注力しており、既存事業×テクノロジーによってサービス品質と生産性を向上させながら、周辺の事業領域や海外にも進出。業界再編と高付加価値化の実現に挑戦することで非連続な成長を成し遂げ、2050年には売上高1兆円を目指す。
(会社概要)
所在地:本社:静岡県島田市中河 737
東京本部:東京都港区港南二丁目15番3号品川インターシティC棟8階
設立:1963年3月6日
代表者:代表取締役社長 山下和洋
事業内容:福祉用具レンタル・販売、リネンサプライ事業等
売上高:336.6億円(2025年3月期)
従業員数:2,829名(2025年3月末現在)
「ヤマシタ」コーポレートサイト:https://www.yco.co.jp/
ヤマシタのホテルリネンサプライ:https://www.yco.co.jp/hotel/
介護用品・福祉用具紹介サイト 「ヤマシタ すぐきた」:https://www.ycota.jp/
介護用品・福祉用具の総合通販サイト 「ヤマシタオンラインストア」:https://caretaro.com/

