一般社団法人十和田奥入瀬観光機構のプレスリリース
会期:2026年12月5日(土)-2027年3月31日(水)

十和田市現代美術館では、2026年12月5日(土)から2027年3月31日(水)まで、スティーヴ・ビショップのアジアの美術館での初個展を開催します。
一般社団法人十和田奥入瀬観光機構(TOWADA TRAVEL)は、本展覧会の後援として参画しています。当機構は今後とも、「十和田市観光戦略2025-29」に掲げられているビジョン「自然とアートを核に稼いで潤う持続的な観光地域づくり」を踏まえ、十和田市現代美術館との連携を取り続けてまいります。ご多忙の中、誠に恐縮に存じますが、ぜひご紹介賜りますようお願い申し上げます。
ご取材のお問合せ先
十和田市現代美術館 広報:大谷、木村
Tel. 0176-20-1127 Fax. 0176-20-1138 Email:media@towadaartcenter.com
※本展のご掲載及び画像などの素材のご使用は、十和田市現代美術館への事前申請が必要となります。あらかじめ上記お問合せ先までご連絡くださいますようお願い申し上げます。
あなたは、いまどこに住み、どのような暮らしをしていますか?また、なぜそこで暮らしているのでしょうか?
近年、長期放置された空き家をはじめ、投資・別荘目的の住宅など、住人のいない建物の存在が、日本のみならず世界各国で深刻な社会問題となっています。
古くから馬産地として知られ、近代には軍馬補充部の設置によって「馬のまち」として発展した十和田市においても、人口減少を背景に住人不在の建物が増加しています。また、2001年の中央省庁再編に伴う移転などにより、多くの空き地が生じました[1]。こうした空洞化に対応する施策の一環として、十和田市現代美術館は誕生しました。近年、美術館の来場者の増加とともに、十和田市では新たな建物の建設や既存建物のリノベーションが進み、人々の集う場が生まれつつあります。その一方で、外国産木材の輸入増などに伴う林業の衰退により、手つかずとなった土地には自然が回帰しています。その結果、野生の熊やシカが増殖し、特別天然記念物のカモシカなどが市街地にまで現れるなど、街のあり様とともに自然の生態系も変化しています。
本展では、ロンドンを拠点に活動する作家スティーヴ・ビショップによって制作された、十和田市の状況とも相通ずる「建物」に主眼を置いた3つの映像作品を通して、人の営みとは何かについて探究します。アジアの美術館で初の個展となる本展では、第二次世界大戦中に軍によって全住民が強制退去させられたイギリス南部の廃村を舞台とする最新作《Stolen From The People》(2026)を世界初公開します。さらに、1990年代アメリカのシットコム本編[2]に挿入された住宅街の映像を再構成した《Meanwhile…》(2008)、そして近隣の鉱山閉鎖に伴い全住民が去った後も維持管理され続けているカナダ北部の小さな町を捉えた《The Caretaker》(2018)を展示します。
実在する建物を対象に制作された作品群が、私たちに何を語りかけるのか。人の営みとは、社会に何をもたらすのか。映像と音を通して没入できる空間となっている本展は「人の営み」と「建物」の関係が生みだす、ちぐはぐな世界へとあなたを誘(いざな)います。
[1] 中央省庁再編:行政の効率化などを目的に、2001年に1府22省庁を1府12省庁へ再編した改革。十和田市では、国の出先機関の統廃合・移転などにより、官庁街通り沿いに空き地が生じ、中心市街地の活性化が課題となった。 [2] シットコム(シチュエーション・コメディ):主に固定された部屋や空間を舞台に、決まった登場人物たちの日常的な会話や出来事を描くアメリカ発祥の連続コメディドラマの形式。代表作は『フレンズ』など。【 みどころ 】

1.人の営みが途絶えて久しい村
世界初公開の映像作品《Stolen From The People》(2026)は、1943年に軍によって住民が強制退去させられたイギリスの小さな村、インバーで撮影されました。住民が戻ることは二度と許されず、現在その村は広大な軍事区域の中心部に位置しています。作中の廃墟群は、市街戦訓練用に建てられた新しい建物のファサードに囲まれて立っています。ビショップは「本作で『建物』をイデオロギーの記録として捉えている」と言い、地元民ではなく社会や政治という外圧によってこの村が変えられたという事実を、建物を通して伝えています。一方、軍による買収を免れた聖ジャイルズ教会は、いまも聖別されたままボランティアの手によって維持管理されています。
2.独自の「映像」と「音」による没入的体験
最新作《Stolen From The People》(2026)は、グラスゴーを拠点に活動する作家・音楽家のジャック・ヴィクリッジとの協働により制作されました。楽曲のベースとなっているのは、住民が不在となった村で今もなお使用されている数少ない要素の一つである「聖ジャイルズ教会の鐘の音」です。映像であると同時に一つの広大な音響空間(サウンドスケープ)を作り出す本作のオリジナルの音は、映像との相互作用によって深い没入的体験を生み出します。これまでも空間内でラジオから流れる音や映像に伴う音など、「音」はビショップのインスタレーションにおいて不可欠な要素でしたが、特定の一作品のためにサウンドトラックが作曲されたのは今回が初となります。
3.人の営みをつなぐ——十和田市現代美術館との共鳴
十和田市は、古くから馬産地として知られ、近代には軍馬補充部の設置によって「馬のまち」として発展し、現在の官庁街通りと呼ばれる中心地が生まれました。しかし、2001年の中央省庁再編に伴う移転などにより、官庁街通り沿いに空き地がいくつも生まれました。こうした空洞化に対応する施策の一環として、十和田市現代美術館は誕生しました。
十和田市現代美術館は、独立した各展示室に1作品のみを展示する「アートのための家」という構成を特徴としており、本展でも同様に1つの部屋につき1つの映像作品を展開します。これら大小の空間では、鑑賞・看視・清掃・修繕など、日々人々が作品のまわりを行き交います。誰一人住んでいない街を管理し続ける管理者(ケアテーカー)や、軍事訓練区域内で教会の聖別を守り続けるボランティアたちなど、スティーヴ・ビショップの映像作品の中にも同様の静かな手仕事が流れています。建物は、誰かが手を入れ続ける限り立ち残り続けます。人の営みをつなぐ場として機能する美術館と映像内の建物との対比から、土地、建物、そして人間の関係性や、コミュニティを維持するために何が必要なのかについて、あらためて思索を促します。
【作家ステートメント】
本展「建物をめぐる3つのフィルム」は、これまでの活動のなかで初めて、映像作品のみに焦点を当てた展覧会となります。ここで紹介される3つの作品はいずれも、家屋や集合住宅から村全体にいたるまで、人の暮らしを包み込む空間の外形に眼差しを向け、ときにはその内部へと入り込んでいきます。その一方で、そこに暮らす人々の姿が捉えられることはなく、その不在がかえってさまざまな問いを呼び起こします。
これまで、建築や室内空間を手がかりに、人の心のありようを描き出してきました。人が自らつくり上げる空間や、そこに反映されたさまざまな選択は、その内面の延長でもあります。作品のなかでは、場所をめぐる感覚が、しばしば時間や記憶と重なり合います。そしてその重なりのなかから、作品は名もなき肖像のように立ち現れます。
今回の展示には、私が育った場所にほど近い、イギリスのとある村を記録した新作《Stolen From the People》も含まれます。そこは、地域の枠には収まらない大きな力学のなかで、20世紀に大きな変貌を遂げました。そして十和田を訪れ、この土地でもまた、同じような力学が社会や政治のあり方を変えてきたことに気づきました。もちろん、それを理由にこの作品を制作したわけではないのですが、今ではこの場所で作品を発表したいと考える大きな理由のひとつになっています。
ほかの作品と同じように、この作品もまた誰かのもとへ届くことを願っています。そして今回はとりわけ、ここ十和田で暮らす人々に観ていただきたいです。


スティーヴ・ビショップ

1983年トロント、カナダ生まれ、ロンドン在住。2008年ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(ロンドン)の彫刻専攻修了。近年の主な個展に、「1971-2026」(madame leniou、ロンドン、2026年)、「Start Over Every Morning」(Daniel Faria Gallery、トロント、カナダ、2025年)、「On The Street Where You Live」(Kunsthalle Osnabrück、オスナブリュック、ドイツ、2024年)など。近年の主なグループ展に、「Imagining Kunsthalle: Routinen (Kunsthalle Appenzell、スイス、2026年)、「Maybe we could both belong」(Den Frie、コペンハーゲン、デンマーク、2025年)、「Foreverism: Endless Horizons」(Ilmin Museum of Art、ソウル、韓国、2024年)など。
【 パブリック・プログラム 】
※ 会期中、下記のほかにもプログラムを予定しています。詳細は後日に十和田市現代美術館webサイトにて発表します。
スティーヴ・ビショップによるアーティスト・トーク
日時:2026年12月5日(土) 14:00-14:40
場所:十和田市現代美術館 市民活動スペース
料金:無料 ※要企画展チケット
【 開催概要 】
展覧会名 スティーヴ・ビショップ 建物をめぐる3つのフィルム
会期 2026年12月5日(土)-2027年3月31日(水)
開館時間 9:00-17:00(入場は閉館の30分前まで)
休館日 月曜日(祝日の場合はその翌日)
年末年始休館:12月28日-1月1日、メンテナンス休館:1月12日-15日
観覧料 一般1800円(常設展含む)、20名以上の団体1600円、高校生以下無料
主催 十和田市現代美術館
助成 大和日英基金、公益財団法人野村財団
後援 青森朝日放送、青森テレビ、青森放送、エフエム青森、デーリー東北新聞社、東奥日報社、十和田奥入瀬観光機構、十和田市教育委員会、ブリティッシュ・カウンシル
企画 長尾衣里子
十和田市現代美術館
2008年に東北初の現代美術館として開館。草間彌生、奈良美智、塩田千春、ロン・ミュエクなど世界の第一線で活躍するアーティストの作品を常設展示しています。美術館の中だけでなく、周辺には公園のようなアート広場に作品があり、子どもから大人まで散策しながらアートとのふれあいを楽しむことができます。
所在地:青森県十和田市西二番町10-9
TEL:0176-20-1127
FAX:0176-20-1138


